その名にちなんで

月曜日から、『その名にちなんで』を読み始めたら、止まらなくなった。
最後の数ページを大事に大事に読み終わる。幸福な時間だった。
インド系アメリカ人の生活を丁寧に丁寧に描いた小説。
移民の困惑や混乱、第2世代との断絶などテーマはさまざまに抽出できるけれど、
これはどこにでもあるようでけっして同じものはない普遍的な家族の物語で
あったと思う。
そして何よりも、ラヒリの筆致の美しいことといったら。
小説を読む喜びは、ディティールを読み込む喜びだとあらためて思う。
と同時に訳文のすばらしいことよ。現在進行形で描かれる長編というのは
なかなかないと思うけれど、これが全体に絶妙な緊張感を与えていた。
あー、久々に「本を読んだ」という気分を味わった。
勢いにのって、『停電の夜に』所収の「三度目で最後の大陸」を読み返す。
その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス) 停電の夜に (新潮クレスト・ブックス)